なぜか伸びない身長に
おでこの赤ニキビ
悩みはこんなにあるけれど
─ Say! Hello!(ハロプロ研修生)
割と初期からですが、最近特につんく♂プロデュース曲を聴くときに注意しているフレーズがあります。
”Yo”や”あぁ(Ah)”といった、歌詞というよりはリズム的なやつ。
こういったフレーズは肉体的な感覚を伴って出てくるもので、だから職業作詞家さんはちょっと使うのに躊躇するのではないかなと思うんですよ。とくに”Yo”とかって。”イェー”ならまだしも。
音楽的といいますか、実際に曲を構成しているシンガーソングライターさんの作詞なら入ってきやすい言葉じゃないかと。
ちなみに直近だと『青春小僧が泣いている』では”YO”も”AH”も入ってますね。
なぜ最近特に気になるかというと、前述の通り非常に肉体的な感覚を伴うので、声帯摘出したことがつんく♂歌詞に影響が出てくるとすれば、こういった部分からだと考えているからです。
ASAYAN時代のモーニング娘。を知っている人ならわかると思うのですが、つんく♂は”モーニング娘”や”太陽とシスコムーン”などのグループ名を決める際、何度も何度も口に出してその響きを確認していました。
「モーニング娘、、、つづいては、モーニング娘でーす、、、うん、モーニング娘、、、ええんちゃうかな」みたいな。
こぶしファクトリーのグループ名選考につんく♂の名前が出てこないのは、肉声時代の終わりを黙示している。
歌詞に関しても、ただ正しい意味のある言葉だけを持ってくるのではなく、メロディに乗せて、機能する言葉を持ってきている。これはハロプロ関連の曲を聴いてきた人ならわかると思うんですよ。つまるところ、つんく曲は非常に肉体的な音楽で、だからこそリズムが重要であり、それが結局はハロプロの特異性になってるんですね。
90年代後半より、カラオケ全盛期、音楽がファスト化していくなかで、非常にハイペースにリリースされながらも特異性を維持してきたのがハロプロ楽曲でしたが、最近はきゃりーぱみゅぱみゅとかが普通にヒットチャートに登ってくる時代なので、異端的な歌詞が異端ではなくなった感はあります。
ただ奇抜な言葉を持ってきているだけではないことも重要です。
こぶしファクトリーの『念には念』は非常にいい曲なんですが、おそらくつんく♂なら”suica”って言葉は使わなかったんじゃないかなーとか、そういうのが引っかかってしまう。好みの問題だとは思いますが、つんく♂は歌詞に使う言葉も時代性を重要視していて、いつかなくなってしまう弱い言葉は使わないようにしてると思うんですよ。
時代性を重要視するから、”ケータイ”や”メール”という言葉をメジャーの楽曲で早いうちから使って、今は普通にいろんなアーティストが楽曲で使う言葉ですが、当時(00年代初頭)は意外と少なかったんですね。前述した音楽のファスト化とも通ずる話ですが、抽象的な歌詞が多い中で、モーニング娘。の歌詞にはそういった「俗」な言葉が使われてきた。だけど「ケータイ」や「メール」って今でも普通に使うから、歌詞が古くならない。流行っているからといって「ハイパーヨーヨー」(例えばですよ)とかって使わない。そういった、言葉の選別がすごくうまい。”ママ”とか、家族に関する言葉も多いし、”もう一度歯ブラシをして”など生理的な歌詞も多い。世の中のヒットソングが個人のかっこいい物語を描く中で、現実と地続きな世界を描き続けてきた。だから若い人たちにウケたし、おそらくいまハロプロが女性から支持を受ける理由でもあると思うんです。
「これは、私のことを歌っている」って。
たった10年前の雑誌
ファッションも笑えるし
「流行」って小悪魔(あくま)に負けるな
そういったつんく♂の歌詞世界が、声帯摘出によってどう変化していくか、楽しみというとすこし不謹慎かもしれないけれど、注目して聴いています。
そして、肉声時代につくった最後のフルアルバムが、ハロプロ研修生のファーストアルバムって、すごく素敵なことじゃないですか。
2013年-2014年の、いまはハロメンになった子、研修生内ユニットに選ばれた子、去っていった子、いまでも研修生として頑張っている子。そういう子たちに向けて作られた作品。
大々的に売り出すわけではない、今を頑張るハロプロ研修生に向けて作られた曲たち。
つんく♂が、いわゆるアイドルをプロデュースする際に考えている「青春の大切な時期を捧げてくれたこいつらに、何をしてあげられるだろう」、その想いがストレートに紡がれて、それでいてしっかりハロー!プロジェクト、しっかりアイドルの曲。
ダンスや歌がうまくならないことを悩むのと同じように、身長やニキビのことで悩む、そんな普通の女の子たちのために書かれた曲。
だからこそ、それは多くの人の胸に響くのではないでしょうか。
人生ってドラマティック
奏でろMy Music
やってみなきゃわかんない
人生の結果もあるから
Say! Hello!
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自分は身体感覚が希薄でしたので、当時のシャ乱Q、モー娘。は全くわかりませんで、縁もゆかりも無いエゲレスの音楽に夢中でしたが、
時空を超え宇宙を超え、青春小僧にはズバッと射抜かれました。
もしかしたら、時空〜のころから曲の身体感覚は希薄化しているのかもしれません。
近田春夫さんも時空〜を激賞しつつそのことに言及してました。
もしくは別の身体感覚にシフトしたのかもしれませんが。
どちらにせよ、今後のつんくさんの活動がとても気になるとともに、
つんくさん成分薄めのハロプロの今後も気になります。